企業で働く場合、個人で出せる成果は限定的です。個人としてでなく、チームとして取り組めば、より大きな成果を出すことが期待できます。
チームで成果を出すには、リーダーがリーダーシップを十分に発揮してチームを引っ張っていくことが必要です。就職活動においても、リーダーシップをアピールすることで良い結果につながることがあります。
本記事ではリーダーシップの定義や主な要素、さまざまな型について説明したうえで、リーダーシップを身に付ける方法について解説します。
リーダーシップとは?
リーダーシップとは、組織が目指す目的を達成するために、チームを導くスキルのことです。リーダーシップについて、詳しく見ていきましょう。
成果をあげるためにチームを主導するスキルのこと
リーダーシップとは、成果を上げるためにチームを主導するスキルのこと。先導者や指導者という意味である「leader」と、位置を意味する「ship」から生まれた言葉です。
組織が成果を上げるためには、チームの方向性を決めたり、停滞しないように物事を推進したりすることが必要となります。その際に求められるスキルが、リーダーシップです。組織やチームの上に立つ人はもちろん、そうでない人も、リーダーシップがあれば仕事をスムーズに進めやすくなります。
マネジメントとは異なるスキルである
リーダーシップと似ている言葉として「マネジメント」がありますが、これらは異なるスキルです。リーダーシップは「メンバーを導く能力」。それに対してマネジメントは、目的を達成するために「メンバーや組織、業務などを管理する能力」を示します。
もう少し詳しく説明すると、企業が目指す方向性を説き、メンバーに会社の将来像をイメージさせ、そこに向かってメンバーを引っ張っていく力がリーダーシップです。一方で、マネジメントは現在の業務に不足が出ないように、業務内容やメンバーを管理していく役割となります。
リーダーシップの主な要素
リーダーシップとひとえに言っても、さまざまな要素があります。主な要素について見ていきましょう。
ビジョンを浸透させる力
ビジョンを浸透させることで、チームが同じ方向を向き、より良い成果を上げることができます。反対にビジョンが浸透していないと、チームがバラバラとなってしまったり、モチベーションが上がらなかったりする可能性があります。
ビジョンとは、会社や事業部が目指す方向性・将来性のことです。人が行動するためには、「なぜそれをやるのか」という動機と納得感が必要になります。特に複数人をまとめ上げるには、全員に理解と納得をしてもらうことが大切です。会社のビジョンを深く浸透させることができるスキルをもったリーダーは、重宝されやすい傾向にあります。
集団を引っ張る力
リーダーには、チームを引っ張る力が必要です。「引っ張る」をもう少し細かくすると、「みんなをまとめ、方向性を決め、目標達成に向けて推進していく力」のことです。
チームといえども、多くの場合メンバーはそれぞれ別の仕事を抱えています。忙しいなかでも成果を上げるために、時には嫌われ者になる覚悟をもって、チームの課題達成に動くことが重要です。
コミュニケーション能力
コミュニケーション能力はリーダーシップを発揮するためにおいて、特に重要な能力であると言えます。目標やビジョンを共有し、集団を引っ張ろうとしても、メンバーとうまくコミュニケーションが取れないと意味がありません。
自分の意見を分かりやすく伝え、メンバーの意見に耳を傾け、自分のチーム以外の人たちと円滑に折衝することが大切です。リーダーには普段からメンバーとよくコミュニケーションを取り、信頼関係を築いていく力が求められます。
実行力・行動力
実行力とは、目的を達成するために計画的に行動する力のことです。単に動くだけでなく、目的に対して現状との差を認識し、その差を埋めるために段階的にどうすれば良いか考える力も求められます。
行動力とは、目的のために積極的に行動する力のことです。目標に対してフットワーク軽く動く力のことを、行動力と表現することもできます。
実行力と行動力はよく似ていますが、実行力の方がより計画性が求められます。リーダーとしては、計画立てて物事を進めていくとともに、時には素早く行動するということで、実行力と行動力の両方が必要です。
課題解決能力
課題解決は、まず問題が発生した要因や事象を分析し、原因を特定・整理することから始まります。課題を解決する案を立案し、それを実行する能力のことを課題解決能力と言います。
チームにはあらゆる課題があるはずです。さまざまな課題に対して客観的に向き合いつつ、課題の本質を見極めたうえで整理、解決に向けて動くことがリーダーには求められます。
有名なリーダーシップの型
「リーダーシップ」には多くの種類があり、いろいろな人がさまざまな型を定義しています。ここでは特に有名な2つのリーダーシップの型について解説していきます。
ダニエル・ゴールマン氏の提唱する6類型
ダニエル・ゴールマンはアメリカで生まれた心理学者で、臨床心理学の観点からリーダーシップについてアプローチしています。
リーダーシップには6つの型があるとし、リーダーは自分でも意識しないまま6つの型から1つ、または複数を採用し使い分けているとしています。
ビジョン型リーダーシップ
ビジョン型リーダーシップとは、共通の目標に向かって人々を動かし、ともに成長しながら取り組んでいくリーダーシップです。最も前向きかつ、総合的に見て最も有効なリーダーシップとされており、夢を語るものの実現するための方法はメンバーにゆだねるため、組織の自主性を高めることもできます。
リーダーが提示するビジョンにメンバーが賛同しない場合、効果が出にくい可能性があります。また、リーダーが強圧的な態度を取ると、チームの雰囲気が悪くなるかもしれません。
コーチ型リーダーシップ
コーチ型リーダーシップとは、メンバーのコーチとしての役割を担うリーダーシップです。メンバーの希望を組織の目標に結び付けていく手法を取るため、メンバーの能力を良く理解し、成長させていくことが必要となります。そのためには1対1の対話が非常に重要であり、モチベーションの高いメンバーに対して効果的な型であるとされています。
メンバーを深く理解していないと、リーダーシップを発揮することは難しいかもしれません。モチベーションが低いメンバーにコーチ型リーダーシップを発揮しようとしても、効果は薄いでしょう。
関係重視型リーダーシップ
関係重視型リーダーシップとは、課題や目標達成よりもメンバーとの信頼関係を重視しながら進めていくリーダーシップです。人間関係がうまくいくことを重視するため、メンバー内での信頼関係向上や組織としてのモラルを向上させたい場合などに求められます。関係重視型リーダーシップは、アジアの大半で重視されるスタイルであり、組織の融和を求める際には最適と言えるでしょう。
デメリットとしては、メンバーの気持ちを優先するあまり、目標や目的に向けて動くことが後回しになりやすい点です。また、人間関係を重視してしまうせいで、何かあった際の責任の所在があいまいになりやすいとも考えられています。これらを補完するためには、ビジョン型など他のスタイルと併用するのが良いとされています。
民主型リーダーシップ
民主型リーダーシップとは、メンバーからの提案を歓迎し、組織に反映していくリーダーシップです。リーダーがメンバーの意見を広く受け入れるため、多くの考えやアイデアが生まれ、組織としてのチームワークを高めることができます。結果よりも過程を重視するため、関係者に前向きなインパクトを与えられるでしょう。
一方、メンバーの能力や知識が不足していると、業務が進まない可能性もあります。また、メンバーの意見がそれぞれ異なると結論を出しにくいというデメリットもあります。。
ペースセッター(実力・率先)型リーダーシップ
ペースセッター型リーダーシップとは、リーダーがレベルの高い仕事を見せることで、メンバーのパフォーマンス向上を促すリーダーシップです。リーダー個人やメンバーが優秀な場合に効果的であり、高い成果を上げることも期待できます。
一方、ベースセッター型リーダーシップにおいては、リーダーがメンバーから高パフォーマンスを発揮することが求められる傾向にあります。メンバーが適応できない場合には、リーダーが積極的にフォローする必要もあるため、リーダーが疲弊してしまう可能性も考えられるでしょう。結果重視の面があるため、メンバーからの不安が大きくなることもあるかもしれません。
強制型リーダーシップ
強制型リーダーシップとは、リーダーの命令に従うことを要求し、メンバーを服従させるリーダーシップです。リーダーが全決定権を握ることになるため、緊急時などに素早い決断を下す際は効率的と言えます。また、問題が多いメンバーに対し、ほかの方法が通用しない場合にも効果を発揮するでしょう。
しかし、最も非効率なリーダーシップスタイルとも言われています。メンバーの自尊心やモチベーションは失われ、また不協和音の原因ともなり得ます。リーダーが独断的に決定するためメンバーには考える機会がなく、組織全体としての成長が阻害されることも懸念されるでしょう。
三隅二不二氏によるPM理論
元九州大学教授の三隅二不二氏は、PM理論を提唱しました。PM理論とは、リーダーシップはP機能「Performance function:目標達成機能)」と「M機能(Maintenance function:集団維持機能)」の二つの要素で構成されているという理論です。
目標達成機能は、会社や事業が目指すゴールに向かってチームを主導し、成果を上げることができるかというもの。集団維持機能は、チームのパフォーマンスを引き出し、全体のGDPを高め、モチベーション管理を行って組織力を高めるスキルを表します。
リーダーシップは、P機能とM機能の強弱により、四つのスタイルがあるとしています。両方同じくらいあることが理想ですが、時と場合によって使い分けることも大切です。
PM型
PM型とは、PもMも同じくらい大きいタイプです。目標達成能力に長けているだけでなく、チームをまとめる力もあります。最も望ましいタイプであり、理想的なリーダーシップと言えるでしょう。
Pm型
Pm型はPが大きくMが小さいタイプです。目標は達成できますが、チームをまとめる力がないことになります。PDCAを回しながら業務を管理し、指導しつつ成果を上げることは短期的にはできるかもしれません。一方、組織をうまくコントロールしたり成長させたりすることは苦手です。長期的に見ると、メンバーのモチベーションやパフォーマンスが低下することが懸念されます。
pM型
pM型はPが小さくMが大きいタイプです。チームをまとめる力はありますが、目標を達成する力は弱い傾向にあります。組織のチームワークが保たれているので、雰囲気は良いかもしれません。しかし、目標達成に向けて計画を立てたり、戦略的にメンバーを引っ張ったりすることが苦手なタイプとされています。
pm型
pm型は、成果を上げる力とチームをまとめる力の両方が弱いタイプです。リーダーとしては力不足と言えるかもしれません。
pM型 目標達成機能:低い 組織維持機能:高い | PM型 目標達成機能:高い 組織維持機能:高い |
pm型 目標達成機能:低い 組織維持機能:低い | Pm型 目標達成機能:高い 組織維持機能:低い |
4象限で見るPM理論
リーダーシップを身につける方法
リーダーシップを身に付けるには、リーダーに備わるようなポジションにつくことや、リーダーシップを養う行動を意識的にすることが大切です。
具体的な行動について見ていきましょう。
授業やゼミのグループワークを主導する
授業やゼミのグループワークを主導することで、リーダーシップを身に付けることができます。例えば、複数のゼミが集う発表会があるとします。しっかり発表をするためには、目標を定めて計画的にチームを導き、完成された発表資料を作成することが必要です。
このような流れを主導することで、目標達成のために現状の問題点を整理しながらやるべきことを推進することが期待できます。その過程で、自分自身もリーダーシップを養うことができるでしょう。
サークルや団体の幹部ポジションを務める
サークルや団体に所属している場合、幹部ポジションを務めることでもリーダーシップを身に付けられるでしょう。サークルや団体には、志向や能力の異なるさまざまな学生が所属しています。
メンバー全員が気持ち良く活動できる環境を作っていくなかで、コミュニケーション能力や実行力といった、リーダーシップに必要な要素を高めることができるでしょう。
インターンシップで責任のある業務をする
インターンシップを体験するなら、責任ある業務を担当することでリーダーシップを身に付けることができます。責任ある業務を担当すると、主体的に動きメンバーを引っ張っていく必要性も出てきます。アルバイトや学業の範囲では体験できない責任感を持って仕事をすることで、リーダーシップの向上にもつながるでしょう。
「まとめ役」になることを意識することが重要
「まとめ役」を自ら買って出ることも重要です。リーダーはさまざまな考えを持つメンバーがいる中で、組織としての方向性や考えを決めなければなりません。時には、誰かの意見を却下する必要も出てくるかもしれません。
普段から「まとめ役」になることを意識することで、目標達成のために意見を取捨選択しつつ、選ばれなかったものに対するフォローについても学ぶことができるでしょう。
まとめ
どの時代でも、リーダーシップが求められてきており、就活の際にもリーダーシップがあることはアピールポイントとなります。
リーダーシップと言ってもさまざまなタイプがあり、求められる要素も多岐にわたります。もし、面接でリーダーシップについて問われた際には、自分の長所を活かしたリーダーシップを説明できるようにしておくと良いでしょう。
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