「SDGs」という言葉をご存じでしょうか。日本ではここ何年かで一般的に浸透し始めた単語なので、「聞いたことはあるけど詳しくは知らない」という方も少なくないと思います。この記事では、SDGsについて分かりやすく紹介します。
SDGsとは?
まずはSDGsの概要について解説します。
持続可能な開発目標のこと
SDGsとは、「Sustainable Development Goals」の略称です。日本語では「持続可能な開発目標」と訳されることが多い用語です。少し聞き慣れない言い回しですが、簡単に言うと「未来のためにやらなければならないこと」というような意味になります。
「地球上の誰一人取り残さない」ことを誓っている
現在世界には、環境や人種、飢餓や貧困などに関するさまざまな問題があります。そのような問題の一つひとつに向き合うことで、「地球上すべての人間の生活や尊厳を守り、誰一人取り残さない」ことを目標として掲げたのがSDGsです。
2030年までに達成することを目指している
2000年の国連サミットでは、この”さまざまな問題”を解決するために「すべての国が協力して解決しよう」という国際的な目標が設定されました。
まず、2000年から2015年までは「MDGs(Millennium Development Goals)」という目標が設定されました。この目標に向けて、結果として世界中の貧困や子供の死亡率が大幅に減少したという過去があります。そして、MDGsによる結果を踏まえて、新たに2015年から2030年までに達成すべき目標として、採択されたのが「SDGs」です。
日本においても独自の取り組みを行っている
SDGsは、政府だけでなく「世界中の人々が達成に向けて動くべきである」という考えです。日本でも、企業や地域コミュニティ間などで独自の取り組みが行われています。
主だった取り組みとして、日本では「SDGs達成に向けた取り組みをした企業を国が表彰する制度」を設けることでSDGsを推進しています。理念にSDGsを組み込む企業も年々増えており、少しずつSDGsという言葉が国内でも浸透してきました。
SGDsはなぜ重要だと言われているのか?
次に、SDGsが重要だと言われている理由を解説します。
国連サミットにて全会一致で採択されている
SDGsは国連サミットにおいて、国連に加盟する国家が一つも反対意見を出さずに採択された”全会一致の目標”です。つまり、すべての国連加盟国が、「地球上に存在するさまざまな問題は国際社会が一丸となって解決しなければいけない」という認識で一致したということになります。
21世紀に入りさまざまな課題が顕在化している
SDGsが全会一致になった理由は、21世紀に入ってからさまざまな問題が顕在化してきたという背景があります。具体的には、以下のような問題です。
気候変動・環境破壊
私たちの今の生活は、20世紀以降の産業の大幅な発展が形作ったものですが、その発展の裏では気候変動や環境破壊などの問題を引き起こしています。
例えば、工業の発展によって私たちの生活は豊かになりました。しかし、工業生産や車両の排気ガスによって大気が汚染されることは、気候変動の原因につながっています。汚染物質を含む工業排水などで水質が汚染されることによって、水生生物が減少するなどの問題が引き起こされているのです。
また、森林伐採は森林を切り開くことで、土地の開発や資源の確保するために行われたものです。結果として、生物の多様性が減少したり、自然環境が損なわれたりするなどの問題が起きました。
貧困・飢餓
日本に住んでいる私たちには想像しにくいかもしれませんが、「多くの人々が貧困や飢餓に苦しんでいる国がある」というのも課題の一つです。
貧困や飢餓が起こるのにはさまざまな原因があります。例えば、国家や地域の経済発展の遅さや農業や漁業などの生産性が低いことなどが挙げられます。ほかにも、自然災害や疾病の流行で食料や物資が行き渡らなくなることで引き起こされることもあるでしょう。
比較的豊かな国でも、政治的な状況の混乱で大規模な貧困が起きるようなこともあります。また、社会的な要因から特定の人々が不当に差別され、結果的に飢餓や貧困に陥ることもあります。これらは国際的協力により、21世紀以降で大幅に改善されてきているとはいえ、未だに深刻な問題となっているのです。
ジェンダー
もう一つの課題は、男女差別や性的マイノリティへの差別など、性に関するさまざまな不平等を生み出す「ジェンダー問題」です。
男女差別とは具体的に、「男女で異なる職業や職種に限定されること」「賃金の格差が生じること」「教育に差が生まれること」など、性差によって生き方が限定される問題を指します。ジェンダー問題の内容は国によってさまざまなものがありますが、特に深刻な国では、文化・宗教的な価値観から変革が難しい状況に陥っている場合もあります。
また、性的なマイノリティへの差別も大きな課題の一つです。LGBTの人々は、人口比率でいうと世界人口の1割を占めていると言われます。性的マイノリティは未だに偏見や差別の対象となりやすく、理解を進めることが難しい状態が続いています。
以上のようなあらゆる差別や偏見をなくすために、教育や価値観の変革を行い、多様性を認める社会を作る必要があります。
持続可能な未来をつくっていくために必須のミッションとなっている
前述のさまざまな問題は、いずれも放置することのできない深刻な問題です。それらをいくつかのカテゴリに分類し、解決すべきゴールを設定したのがSDGsとなります。
例えば、「気候変動や環境破壊を止める」ことで住みやすい地球を作ることに努めます。また、「飢餓や貧困をなくす」「ジェンダー問題を解決する」ことで未来の世代が安全な生活を送るためのミッションです。
SDGsの17のゴール
最後に、SDGsが掲げる17のゴールを一つずつ紹介します。
1.貧困をなくそう
「貧困をなくそう」は世界中のあらゆる貧困をなくすことをゴールにしており、基本的な生活を送ることができない人々を支援します。具体的には、住居や教育・健康サービスの提供や、貧困指標の高い国を経済的に成長させる国際協力などが目的です。
2.飢餓をゼロに
「飢餓をゼロに」は、世界中の人々へ食料が行き届き、かつ栄養状態が改善できていることを目指すゴールです。以下のような内容の国際協力を目標にしています。
- 農業や漁業などの生産能力が低い国への技術支援
- 災害・内戦などで十分に食料品が行き渡っていない国への物資の提供
また、環境を破壊するような農業を止めることもこのゴールに含まれています。
3.すべての人に健康と福祉を
「すべての人に健康と福祉を」は、あらゆる年齢層の人々が健康的な生活を送れる社会を目指すゴールです。具体的には、健康サービスの拡充や、感染症の防止、一人ひとりの生活習慣改善などを目指す目標となっています。
国によって、医療・福祉のレベルはさまざまです。もし、世界中の人々が健康的・かつ長寿であることが実現できれば、経済的にもプラスの効果があると考えられています。
4.質の高い教育をみんなに
「質の高い教育をみんなに」は性別や地域・貧困による教育の格差をなくし、世界中の人々が質の高い教育を受けられることをゴールにしています。すべての人々が課題解決能力や技術的なスキルを身に付けるような教育を受けられれば、さらに世界が発展できると考えられるためです。
このゴールでは、教育自体の質を向上させるため、教室や教材の見直しや教員の評価制度を導入するなども取り組みとして行われています。
5.ジェンダー平等を実現しよう
「ジェンダー平等を実現しよう」は男女の格差をなくす法的な枠組みの整備や、性差・性的マイノリティについて正しく学ぶ教育の普及です。あらゆる差別の撤廃をゴールにしています。
また、社会的に女性の負担になりがちな子育てや介護などへの社会的支援もこのゴールに含まれています。
6.安全な水とトイレを世界中に
「安全な水とトイレを世界中に」は、すべての人々に衛生的な環境を提供することをゴールとしたものです。不衛生な水やトイレは感染症などを引き起こす恐れがあります。水やトイレを使用するためのインフラを整備や、水資源の確保などを目標にしています。
また、水を生み出す産地や森林などの保護もこのゴールに含まれているようです。
7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに
「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」は、世界中の人々が生活・産業における必要な資源(エネルギー)を使えることを目指す目標です。また、地球にやさしいエネルギーを採用することもあわせて目標としています。
現在、世界で主流となっている石油や天然ガスなどのエネルギーは、大気汚染を引き起こしやすい物質です。これらを太陽発電や風力発電など、別のエネルギーで賄い、かつ資源の乏しい国にもエネルギーが行き渡ることをゴールにしています。
8.働きがいも成長目標も
「働きがいも成長目標も」は、雇用における待遇の改善などを行うことで、すべての人々が働きがいのある仕事に就くことを目指すゴールです。
具体的には、劣悪な労働環境や条件をなくすための法整備や、奴隷制・児童労働の撲滅などを指します。
雇用に関しては、国ごとに状況が大きく異なります。働きがいがあり自身のキャリアアップを望めるような仕事につける社会を全世界で作ることを目的とする取り組みです。
9.産業と技術革新の基盤をつくろう
「産業と技術革新の基盤をつくろう」は、これからの産業の発展や、新たな技術の開発などに向けた投資やインフラの整備を目標としたゴールです。
産業や技術的な発展度合いが低い国が将来的に発展できるように、以下のような行動によって資源などの輸送コストを下げ、生産性を向上させる取り組みです。
- 道路などの輸送経路を整備する
- 電気や水道の安定した供給を行う
10.人や国の不平等をなくそう
「人や国の不平等をなくそう」は、個人間・国家間での格差や不平等をなくすためのゴールです。以下のようなケースによって、国同士の貧富の差を解消することを目標としています。
- 人種や性別などから生まれる収入・教育・社会的な保証制度の差などをなくすこと
- 先進国の企業が途上国の人々を低賃金で働かせること
11.住み続けられるまちづくりを
「住み続けられるまちづくりを」は、人々が安心して暮らすことができるような街づくりを推進するゴールです。具体的には、以下のような行動によって安全さと住みやすさを両立した街を作ることを目的としています。
- 地震や洪水など自然災害の被害を最小限に抑えるような住宅の整備
- バスや電車などの公共交通の整備など
12.つくる責任 つかう責任
「つくる責任 つかう責任」は、あらゆる産業において、生産者側・消費者側ともに責任を持つことで、持続可能な生産・消費の関係性を作ろうという目標です。
以下のような行動によって、産業における環境への負荷を下げることをゴールとしています。
- 生産者側はリサイクル可能な資源を使った製造を行うこと
- 太陽や風力などのクリーンなエネルギーを使うことなど
同時に、消費者にも以下のような地球環境に優しい消費活動を行うことが求められています。
- 一人ひとりが環境に優しい企業の商品を選ぶこと
- リサイクル活動への協力などを行うことなど
13.気候変動に具体的な対策を
「気候変動に具体的な対策を」は、地球の気温上昇や、それによって引き起こされる異常気象を国際的な協力で緩和させるための目標です。
森林伐採やCO2の排出量増加などで温暖化が進み、各国で猛暑や豪雨などの異常気象が観測されるようになりました。この対策として、植林活動やCO2を排出しない交通機関の採用などの取り組みが行われています。
14.海の豊かさを守ろう
「海の豊かさを守ろう」とは海洋汚染を防ぐことや、海洋保護区の設置などを行う目標です。主に工場排水やプラスチックごみの海洋流出を防ぐための取り組みや制度の制定、特定の海洋生物が生息する海域の保護などを行い、水質や生物の多様性を保全することをゴールにしています。
15.陸の豊かさも守ろう
「陸の豊かさも守ろう」は、前述の「海の豊かさも守ろう」と同様に、陸地の保護を行う目標です。砂漠化を防止するための森林保全や、土を傷める農薬や化学薬品を使わない農業の推進などを行い、生物の多様性保護と土壌の保全をすることを目標にしています。
16.平和と公正をすべての人に
「平和と公正をすべての人に」は、世界中の人々が安全に暮らすことを目指す目標です。具体的には、犯罪を防止するための取り組みや、インフラの整備を行っての治安向上、国家間や地域間の紛争防止などを指します。
また、強制労働や性的搾取のための人身売買を防ぐための国際的な協力なども、この枠組みに含まれます。
17.パートナーシップで目標を達成しよう
「パートナーシップで目標を達成しよう」は、SDGsの掲げる目標を国家、企業、個人で協力して達成することを指します。SDGsの目標は、国が法整備を行わければならないようなものから、私たち一人ひとりの意識の変革が必要なものなど、さまざまな規模のものがあります。
これらを達成するには、複数の国同士の政府で連携したり、地域ごとのコミュニティで協力しあったりなど、問題ごとにパートナーシップを結ぶことが必要です。
まとめ
SDGsが掲げる一つひとつのゴールはとても壮大ですが、国や世界中の企業、個人が向き合うことで少しずつゴールが見えてきている状態です。
この記事で初めてSDGsを初めて知ったという方も、あらためて未来の地球に思いを馳せ、”持続可能な未来を作る”ことを考えてみてはいかがでしょうか。
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